プロローグ 講義を始めるにあたって |
公と個人 13 |
日本近代化の不幸、戦後の不幸 15 |
法と道徳の違い 16 |
法にどうアプローチするか 18 |
第I部 法の原理-法はなぜ必要なのか |
第1章 法とは何か |
1 法とは強制をともなったルールである |
人間の社会になぜ秩序は必要なのか 24 |
法と強制力の問題 26 |
法はなぜ正しいのか 28 |
2 法の強制説(命令説)VS法のルール説 |
法の強制説とマルクス主義 30 |
なぜ法のルール説を採るのか 34 |
ルール説による証明 35 |
3 法の理性説(自然法) |
「神の法」とトマス・アクィナス 36 |
神の法から自然法へ 38 |
人権思想はどこからきたのか 40 |
第2章 ハートの法理論 |
1 H・L・A・ハート |
法作家の社会的地位について 43 |
法とは「一次ルールと二次ルールの結合である」 45 |
二次ルールについて 47 |
2 言語ゲーム(language game)としての法 |
暗黙のルールと明示化されたルール 49 |
ルールブックがなぜできるのか 51 |
3 審判のいるゲーム |
審判とルール 53 |
審判の役割は命令か 54 |
第3章 近代法の原則とは何か |
1 罪刑法定主義 |
裁判も処罰もすべて法(条文)を前提とする 56 |
推定無罪と挙証責任 58 |
裁判における被告人の権利 60 |
罪刑法定主義について 62 |
2 契約自由の原則 |
民法と裁判所の役割 64 |
3 憲法 |
憲法とは政府へ宛てた手紙である 66 |
政府の正統性と憲法 70 |
イギリス憲法の場合 72 |
第II部 法の歴史-古代宗教と法 |
第4章 ユダヤ教と法 |
1 神との契約 |
なぜ「神との契約=法」なのか 76 |
憲法のアイデアと「神との契約」の類似性 78 |
2 厳密ルール主義 |
ユダヤ教の厳格さ 80 |
ユダヤ人の生活様式はなぜ二千年もたもたれたか 81 |
3 律法と註釈の体系 |
ユダヤ教の経典について 83 |
第5章 キリスト教と法 |
文明論としての「宗教と法」 86 |
1 個人救済の愛の律法 |
イエス・キリストとユダヤ教 87 |
パリサイ派と律法 89 |
ユダヤ教からキリスト教へ 92 |
2 世俗法と教会法 |
ローマ法とキリスト教徒 95 |
政教分離の始まり 96 |
3 政教分離と近代国家 |
近代国家の成立とルターのロジック 98 |
宗教戦争から生まれた宗教的寛容 101 |
キリスト教と議会 103 |
第6章 イスラム教とイスラム法 |
ユダヤ教とイスラム教 105 |
1 『クルアーン(コーラン)』と法源 |
『クルアーン(コーラン)』とはどんなものか 106 |
違反と誤審と「二重の幸福諭」 108 |
その他の法源-法学者の判断が新しい法源になっていく 110 |
2 イスラム法共同体 |
法学者と政治的支配者 113 |
イスラム法共同体がなぜまとまるか 114 |
3 イスラム主義・保守派と改革派 |
イスラム原理主義とは誤解の産物である 116 |
イスラム諸国と近代化の問題 118 |
イスラム社会の直面する問題 120 |
イスラム女性とフェミニズム 122 |
第7章 仏教と法 |
1 サンガのルール |
サンガと戒 124 |
サンガの特徴 126 |
サンガにはなぜ法律が及ばないのか 127 |
大乗と戒律 129 |
2 中国仏教と法 |
中国仏教の特徴 130 |
禅宗について 131 |
3 日本仏教と法 |
戒律を学ばなかった日本仏教 133 |
浄土真宗の革命性 135 |
第8章 儒教と法 |
1 徳治主義と法治主義 |
法ではなく徳による支配を 138 |
中国社会の構造と法 140 |
連帯責任と宗教における個人主義 143 |
2 官僚制と律令制 |
武力を排した中国官僚制の歴史 145 |
支配者のための法 148 |
第III部 日本人と法-法感覚を鍛えるために |
第9章 日本社会と法 |
1 律令法から中世法、近世法へ |
律令時代以前の法 153 |
空洞化する律令制 154 |
なぜ武士が台頭してきたか 156 |
鎌倉幕府と関東御成敗式目 159 |
法的根拠から見た明治維新 160 |
2 一揆と村八分 |
惣付と農民の団結 162 |
3 法の支配と空気の支配 |
法の支配がなぜ重要か 164 |
全員一致と「空気」の支配 167 |
第10章 明治国家と法 |
1 幕藩法と近代法 |
中央集権化と天皇の権限 169 |
2 明治憲法と法 |
明治維新から内閣制の導入まで 171 |
天皇機関説論争 172 |
明治の指導者たちの法律感覚 173 |
3 法をめぐる日本人の誤解 |
「官/民」とは何か 175 |
統治権を放棄する日本政府 178 |
予算問題と財政投融資の矛盾 179 |
民主主義はどこまで理解されているか 181 |
第IV部 未来を構想するために-法と自由をめぐるいくつかの問題 |
第11章 民主主義とリバタリアニズム |
1 リバタリアニズムとは何か |
反権力としてのリバタリアニズム 184 |
どこまで民営化化できるか 186 |
2 自由の根拠-身体と財産 |
自分の身体はどこまで自由か 188 |
所有と悦と法律と 190 |
財産相続の問題 192 |
3 公共性とは何か |
家族・公衆・ルール 194 |
公衆とは公共そのものである 197 |
第12章 国際社会と法 |
1 国際社会(international community)とは何か |
国際紛争は誰が調停するのか 201 |
慣習法としての国際法 202 |
2 国際法は法なのか |
国際法に強制力はない 204 |
国際法と憲法、どららが上位か 205 |
東京裁判の問題 207 |
国際法は訂正できない? 210 |
3 日本をとりまく国際法の問題 |
日本国憲法と国際法の乖離 211 |
歴史認識はどこまで共有できるか 214 |
日本的常識と国際基準 215 |
原点から日本社会を築きなおすために 217 |
あとがき 220 |