序章 9 |
大学革命の特徴と背景 |
『中央研究所の時代の終焉』 |
営利企業にとっての研究開発の意味を再考する |
研究開発モデル |
自前主義から産学連携の時代へ |
本書の内容と構成 |
第1章 産業・経済にとって研究開発とは何か 27 |
経済における技術の意味についての二つの考え方 |
利潤は価値体系と価値体系のあいだの差異から生まれる |
経済発展を生み出すのは「新結合」 |
第2章 知とアントルプルヌールシップの新結合 37 |
未来の価値体系を知ることと、それを顧客に提供することは、別の仕事 |
研究はストック、開発はフロー |
研究は経済行為か |
新結合を遂行するのは企業家 |
一九八〇年代のシュムペーター反革命 |
知とアントルプルヌールシップの連携をインターネットが支援 |
第3章 中央研究所とリニア・モデルの時代 59 |
中央研究所とリニア・モデルの時代の特徴 |
ドイツの化学産業で中央研究所の原型が一九世紀末に誕生 |
米国では最初は「サービス主体の大企業+個人発明家」 |
第一次世界大戦の前後から企業研究所が増加 |
ナイロンがリニア・モデルを生む |
「特許を売る」から「特許でつくる」へ |
リニア・モデルを信じた中央研究所の黄金時代 |
リニア・モデルの背景に科学優位主義 |
研究所は会社に経済的利益をもたらしたか |
第4章 ITが「中央研究所の時代の終焉」を準備 79 |
コンピュータや半導体集積回路ではリニア・モデルは機能しにくい |
コンピュータがハードウエアとソフトウエアの分業をもたらす |
ソフトウエアにはリニア・モデルは妥当しない |
コンピュータの小型化とシリコン・バレーの興隆 |
マイクロプロセッサを生み出したのは中央研究所ではない |
発注者と受注者の共同作業がマイクロプロセッサを生む |
ユーザーが大市場を拓く |
インターネットが連携・協力するインフラへの発展 |
東から西へ |
集積回路 の技術開発では中央研究所の役割は限られる |
インテルは中央研究所を持たない |
「開発と製造の同居」が半導体産業に広がる |
集積回路では互いに他社技術を使わざるを得ない |
研究投資の見返りを独占できない |
「特許でつくる」から「特許を売る」への反転 |
第5章 タテからヨコへ―ネットワーク時代の産業構造 107 |
大企業ではイノベーション活動が日常業務と化する |
破壊的技術によるイノベーションの実現は大企業ほど難しい |
機関投資家の行動が中央研究所への圧力となる |
インターネットのインパクト |
タテからヨコへ |
ヨコ型への転換の影響 |
ヨコ型に転換した理由と背景 |
ヨコに競争しタテに連携する |
ヨコ型構造の中での大企業の役割 |
知とアントルプルヌールシップの連携 |
第6章 なぜ産学連携か 127 |
シリコン・バレーが産学連携の成功モデルとなる |
大学の「知」とアントルプルヌールシップの新結合 |
大学をネットワークで連ねたバーチャルな中央研究所 |
オープンな大学をプラットフォームに産学官が連携 |
政府資金の減少が大学を産学連携に向かわせた |
一九八〇年に米国でバイ・ドール法が成立 |
「遺伝子組み換え技術」という強烈な成功事例 |
ベンチャー支援や地域振興と産学連携が連動 |
サッチャーが英国の大学に競争原理を導入 |
ヨーロッパでも大学が地域繁栄の中核に |
利益相反への配慮―太陽の光が一番の消毒剤 |
「未来から現在を見る」大学こそ産業的価値の源泉 |
第7章 日本における産業技術開発体制と産学連携の推移 151 |
日本は産学連携の最先進国 |
戦後日本の大企業体制 |
日本に半導体ベンチャーがなかなか誕生しなかった理由 |
「系列」は市場と企業の中間 |
中央研究所ブームと理工科ブーム |
広く薄く大学に寄附をして理工系卒業生の推薦を期待 |
一九七〇年代前半に産業構造は大きく転換 |
超LSI技術研究組合・共同研究所が成功モデルに |
「日本製品は高品質」との評価を得る |
「基礎研究ただ乗り」批判を応えて基礎ソフト |
バブル崩壊で基礎研究指向は泡と消える |
分社化後の研究所のゆくえ |
第8章 日本の産学連携―期待と現状の落差を超えて 175 |
中小企業・ベンチャー企業が産学連携に積極的 |
日本の大学との共同研究はなぜなりにくいのか |
大学院博士課程にまつわる問題 |
博士課程大学院生には人件費を払え |
技術移転は産学連携に必ず伴う |
大綱化→重点化→法人化 |
勉強しない大学生こそ日本の大学の最大の特徴 |
成功は失敗のもと |
大異を認め小同で協力 |
付録A 科学優位主義とリニア・モデル 203 |
科学優位主義は古代ギリシャに遡る |
中世には、知識は大学、技術はギルド |
技術者養成学校の創設とアントルプルヌールの活躍 |
東京帝国大学工科大学は世界初の総合大学工学部 |
大学の変身と科学者共同体の形成 |
リニア・モデルで科学と技術が本格的に結びつく |
アカウンタビリティととしてのリニア・モデル |
技術者の大部分は研究者ではない |
産学連携から企業家を輩出 |
学位優位主義の終焉 |
付録B 米国における産学連携の推移 225 |
カレッジ(後の州立大学)は地場産業と連携 |
工学や応用科学を米国大学は大学内に取り込む |
米国大学人は、実用主義、職業主義、産学協同指向を卑下 |
第二次大戦後に米国の大学は基礎研究と大学院教育のセンターとなる |
企業は自前の中央研究所を基礎研究方法に拡大 |
大学紛争のなかで産軍学複合への批判が燃えさかる |
一九八〇年代ごろから産学連携の方向へ再反転 |
付録C トランジスタと半導体レーザーの場合 235 |
トランジスタ開発のプロデューサー、ケリー |
半導体レーザーの室温発振におけるゴールトの役割 |
付録D ネットワーク部外性と「この指とまれ」モデル 239 |
勝ち組がますます勝ちやすくなる |
ことを決めたのはレンタル・ビデオソフト |
シェアの2乗に比例して有利に |
知識集約的な産業においては収穫逓増の原理が働く |
ネットワーク部外性は非営利活動と市場経済活動をつなぐ |
「この指とまれ」モデル |
マーケティングと標準形成を兼ねる |
ベンチャー企業が主導権をとることが多い |
付録E 売家と唐様で書く三代目 253 |
付録F 大学人が発明した特許の帰属 257 |
国立大学教職員の特許は原則個人帰属 |
実際には企業帰属が多かった |
TLOの役割と法人化以後 |
付属G イノベーション・システムにおける「官」の役割 265 |
連携のための環境整備が「官」の役割 |
かつては国立研究所がナショナル・プロジェクトを主導 |
異質で多様なものが出会う環境こそが大切 |
あとがき 273 |
参考文献 283 |
索引 308 |